片岡彩音、27歳。全国屈指の桃の名産地で、市役所勤めをしながら実家の畑で桃を育てている。目下の目標は、亡き兄が接ぎ木で作り出した新種の桃「赤磐の夢」を品種登録すること。心豊かな仲間に見守られ、懸命に働く彩音だったが、愛する故郷は東京で女優になるという彼女の夢を奪った場所でもあった。そんなある日、東京から農林水産省の若き官僚・木村治がやって来る。理想を見失いかけている彼にもまた、日本の農業政策を変えるという夢があった。ギクシャクしながらも、少しずつ距離を縮めていく二人。甘くて香り高い「赤磐の夢」は積年の願いを叶えるのか?
そして二人の夢は―? 陽光あふれる桃の産地を舞台に、夢を追うこと、生きることの意味を描いた珠玉の青春映画が誕生した。
ヒロインの彩音に扮するのは、連続テレビ小説「花子とアン」「不機嫌な果実」などの人気テレビドラマから世界的巨匠アッバス・キアロスタミの『ライク・サムワン・イン・ラブ』まで、幅広い作品で抜群の演技力を見せている高梨臨。本作では夢に向かってひたむきに生きる等身大の20代女性を、時に繊細に、時に茶目っ気たっぷりに演じる。
ヒロインと心を通わせていく農林水産省の職員・治には、今もっとも出演作が相次いでいる俳優といっても過言ではない斎藤工。一見冷めているようで情熱を秘めた役をさわやかに演じる。
その他、池内博之、津田寛治、永島敏行、井上順などのベテランや、これからが期待される安倍萌生、海老瀬はな、辻伊吹といったフレッシュな若手が集結。またシリーズ第1作『種まく旅人~みのりの茶~』でお茶農家と市役所職員を演じた田中麗奈と吉沢悠が、同じ役の成長した姿で特別出演しているのも見どころだ。
監督は、『チルソクの夏』『半落ち』『夕凪の街 桜の国』など、時代を超えて愛されるヒューマンドラマの数々を送り出してきた佐々部清。日本の地方で第一次産業に携わる人々の暮らしをその土地の風土とともに描く『種まく旅人』シリーズに 初参戦した本作では、志半ばで地元に戻ったヒロインの葛藤をていねいにすくい上げる。
第1作『種まく旅人~みのりの茶~』(2012年/塩屋俊監督)、第2作『種まく旅人~くにうみの郷~』(2015年/篠原哲雄監督)のテーマでもあった“食を育てる仕事”の尊さを描くと同時に、誰もが共感できる普遍的な青春ドラマを作り上げた。
撮影は、豊かな日差しと土壌に恵まれ、桃をはじめとする果樹栽培が盛んな岡山県赤磐市で敢行。人々の営みと自然が美しく調和したノスタルジックな風景も本作の重要なキャラクターの一つである。